ラーメン屋の曲がセンスあり過ぎて困る、
ラーメン屋の曲のチョイスは凄い。何だろう、あの絶妙なヒットソングを流してくる感じ。誰もが知ってそうで1部の人にはギリギリで伝わらなそうな、本当にむず痒いラインをクールに攻めてくる。
おぉ!あったなこんな曲。懐かしい。懐かしい。とラーメンを待ってる時間に思わず頭を振り回しながら、小刻みに足でリズムを刻んでいる人も多いのでは無いだろうか?
うむ。その気持ちは十分に分かる。「腹減ったー早くラーメン来ないかなー」と待っている中、突然、自分が忘れかけていた名曲が流れ始めた瞬間、おっ?これは?っと思わず口ずさんでしまい、頭の中を流れていくそのメロディーを追い、その頃にあった青春のひと時を思い出しながら、思い出に浸かる。
ふふ~んと不気味な鼻歌と笑みをこぼしながら、しばらくその曲に浸っていると気づけばラーメンが出てきている。
マジックだ。なぜ先程まで腹減ったー等と、思っていたのだろう?もはや、減ってない。腹が減ってない。曲で腹が満たされている。こわい。怖いけど1口食べてみる。うまい!やっぱ腹減ってたわ。ラーメンに夢中になる。おいしかった!また来よう。
こうなるのだ。
だからラーメン屋の曲のチョイスは凄い。この戦法はヤバい。
戦法なのかは良く分からないのだが、とにかくヤバい。
曲の選び方にセンスがあり過ぎてヤバい。
しかし、 僕は最近、このラーメン屋の曲センスあり過ぎ問題に悩みを抱えるようになってきた。
皆さん、こんな体験が無いだろうか?
テレれれーれ~、テレれれれーれれ~
うわあ懐かし!なんだっけ!?この曲?
そう、これだ。この、なんだっけ?この曲?だ。
これが、最近めちゃくちゃ頻繁に発動するようになってきた。
歌ってるアーティストが分かるなら、何とかなる。しかし、それすらも分からないとなると一気に絶望的になる。
検索するにしても、その歌詞の一部分と、メロディーだけというわずかな手がかりだけで探し出さなくてはならないという、無理ゲー展開に持ち込まれる。
これが、全く分からない曲で、そこら辺のコンビニなんかで流れているのならすぐに諦める。が、ラーメン屋は違う。聞いたことがあるという、人間が気になる微妙な感情に、巧妙につけこんでくる。
加えて、あの空間だ。居酒屋や、スーパーと言った、人々がガヤガヤとしている場所とは対照的にそこに待っているのは沈黙。おのおのが皆、険しい表情で、いまか、いまかとラーメンを待ち続ける。ズルズルと周りの人達がラーメンをすする音を聞きながら、次は俺の番、俺の番はいつだ。とラーメンを待つ。ラーメンしか待っていない。
てか、ラーメンを待つことしかできない。ラーメンを待つ以外の選択肢がない。
この状況こそが、耳に曲が自然と入ってくる方程式だ。
そして、僕の検索魂。いや、分析アナリストとしてのプライドに火を付ける。
くそっ!なんだ分からない。でも絶対どっかで聞いたことある。なんだ?ドラマか?映画か?アニメか?と、必死で悩んで検索してるとラーメンが出て来る。
おぉ!待ってました!とラーメンに食いつく。
ラーメンに夢中になる→そして歌詞すらも忘れる。と言った、マジカルミューラージックメン・イリュージョンに突入する。
この、マジカルミューラージックメン・イリュージョンに落ちいったら最後。ラーメン屋を出る時には歌詞は頭から消え、残っているのは微かなメロディーだけ。
テレれれーれーテレれれれーれれ~
だけだ。
もうおしまいだ、
歌詞と言う絶対的手がかりを失い、無限にメロディーだけが頭を巡回し、何だっけ何だっけっと変な汗を流しながら、とち狂いはじめる。
何も頭入ってこない。
てれれれーれ~テレれれれーれれ~
ってなんだ?
っと帰り道から家まで、詠唱のように唱え続ける。
気になって仕方が無い。
だぁぁぁぁぁ!!!っと
頭を抱え、1日中流れゆくそのメロディーに悩まされた結果、
結局思い出せず次の日を迎える。
すると、どうなるかわかるだろうか?
そう。
忘れるのだ。
わずかに残ったあの、メロディーすらも消えてしまうのだ。
あー
もう、おわった。
今度こそ、完全におわった。
塵のようなヒントすらも無くなった。
もうノーヒントだ。
こんなものネクストコナンズヒント無しで、次のコナンの話の犯人を当てにいくようなものだ。
メロディーを思い出すところから始めないといけない。
振り出しに戻された。その時の表情と言えば、それはもうはかり知れないものだ。
皆さんは、すごろくをやっていて、「ふりだしにもどる」というマスに止まったことがあるだろうか?
そう、その表情だ。その表情を思い浮かべて頂きたい。
そして、その表情のまま、数日過ごすと、どうなるかわかるだろうか?
そう。
忘れるのだ。
もう、何を忘れてしまったのかを忘れるのだ。
あれ?なんか忘れてる気がするな?
大事な事を忘れている気がする?でも思い出せない。
漫画の主人公が、いっときの過去の記憶を無くして、それを思い出そうと片手をおでこに当て、クソっ!なんだ?ってなってるシーンを思い浮かべて頂きたい。
そして、そのような状態のまま数日過ごすと、
どうなるか、
そう、
ここで、
ラーメンが食べたくなる。
なんか急に、食べたくなる。
異常な程ラーメンが食べたくなる。今日の晩飯はラーメンだ。何が起きてもぜったいラーメンだ。
道沿いにある、吉野家、富士そば、天屋、ポポラマーマ等と言った強豪四天王には一切の目もくれず、慣れた手つきでガン無視して進んで行く。
ふっ今宵はお前ら等には用はない。なぜなら、俺はラーメンが食べたいから…いやラーメンが俺に食べられたいから、とでも言っておこうかな?ふふっ
っといった、ランクSのサイコマンが、憑りつかれたようにラーメン屋へと向かって行く。
そして、ラーメン屋の前に立ち、ドアを開けて一足店内に踏み入れた瞬間…
ビビッ……!!
!?!?
まるで、結界の張られたアジト踏み入れたかのように。
甦る。
一瞬にして……
失った記憶がフラッシュバックしてくる。
シュッシュッシュッ、と過去の映像が頭に映し出されていく。
そして、すべてが繋がる。
あーそうだ。思い出したわ。忘れてたの思い出したわ。
なんだったけ?あの曲。
っとふぬけた表情で、券売機で食券を買い何食わぬ顔で席に着く。
そして、ラーメンを待っている間、また気づけば、店内の音楽に虜になっていくのだ。
あー今宵もまた、ラーメンの味と、あの素敵な名曲たちに踊らされていくのだろう。